広域交付制度とは?戸籍謄本の取得が簡単になる戸籍制度改正【令和6年】
2024/02/29
令和6年3月1日より施行される戸籍法改正と戸籍制度改正について、今回はお届けします。この改正により、戸籍関連手続きの一部が簡素化されたり、新たな取り扱いが加わったりするなど、様々な変更点があります。ここでは改正ポイントと対策について解説します。【法務省ホームページ参照】
目次
広域交付制度とは
広域交付制度とは、本籍地以外の市区町村の窓口において、戸籍証明書や除籍証明書を請求できる制度です。令和6年3月1日以降、改正戸籍法の施行によって新たに広域交付制度が導入される制度です。
広域交付制度に基づいて交付を請求できるのは、戸籍・除籍に係る戸籍証明書等(=戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本。以下「戸籍謄本類」)です。これに対して、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍の謄本については、広域交付制度の対象外とされています。広域交付制度を利用して戸籍謄本類を請求できるのは、本人、配偶者、直系尊属、直系卑属です。なお、広域交付制度による戸籍類の請求は、代理人によって行うことは認められていません。必ず自分で市区町村役場の窓口に行って手続きを行う必要があります。また、行政書士等の一部士業などに認められている「職務上請求」についても、広域交付制度の利用は認められていません。
広域交付制度のメリット・デメリット
相続が発生した場面においては、広域交付制度を利用するメリットが大きいと考えられます。遺産分割協議書の作成等をする際には、相続人が誰であるかを確定しなければなりません。まず被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。そして、相続人の本籍地へ戸籍謄本類を請求し取得、調査します。相続人は全国の市区町村にいるケースが多く、すべてを調査して取得することはとても大変で時間と手間がかかります。広域交付制度を利用すれば、必要な戸籍謄本類を一度の手続きで揃えられる可能性があります。ただし、コンピュータ化されていない一部の戸籍簿・除籍簿については、広域交付制度を利用して謄本を請求することができません。また、本人の兄弟姉妹が広域交付制度を利用して謄本を請求することもできないこととされています。さらに、郵送請求ができないため必ず窓口で取得する必要があります。窓口でも取得に時間がかかる場合もあるようです。
以上のことにより、広域交付制度を利用したとしても、必要な戸籍謄本類が確実にすぐ揃うとは限らないデメリットがあります。揃えきれない戸籍謄本類については、行政書士などに依頼して事実証明や権利義務に関する書類を作成するため、職務上請求で取得する必要があります。
戸籍届出時添付書類の負担軽減
令和6年3月施行の一部には、戸籍の届出の際の簡素化も挙げられます。本籍地ではない市区町村の窓口に戸籍の届出を行う場合でも、提出先の市区町村の職員が本籍地の戸籍を確認することができるため、戸籍証明書等の添付が原則不要となります。例えば、新婚旅行先の市区町村の窓口に婚姻届を提出する場合など、本籍地ではない市区町村の窓口に戸籍の届出を行う場合でも、提出先の市区町村の役所職員が本籍地の戸籍を確認することができるようになりますので、戸籍届出時の戸籍証明書等の添付が原則不要となります。
将来期待されることと生じる問題
今後の手続きの簡素化について期待されるとは戸籍法に限らず様々な部分でありますが、マイナンバーカードや電子証明書を用いて様々な手続きがスムーズになり円滑化や住民の利便性が向上し生活がしやすくなることが期待されます。しかし、高齢化社会に伴い、デジタルデバイド(情報技術の操作や利用スキルの格差)が進み、簡素化されている現状がなかなか浸透しておらず十分に活用できていないことも現実の問題にあります。デジタルデバイドの解消は、大きな問題としてとらえる必要があります。高齢者にとっては役所の存在は、コミュニケーションの場所でもあります。すべてが簡素化されてゆくことが良い場合と悪い場合もあるのかもしれません。SDGsの持続可能な社会の実現のための目標にある「誰もが取り残されない社会」を作るためには、デジタルデバイドの解消は大きな課題となって行くと感じます。