自筆証書遺言と公正証書遺言の違い|相続の基礎知識
2024/03/19
正しい方法で遺言を残すことができているかは、意外と知られていないことかもしれません。今回は、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いや、遺言を残す上で必要な情報を紹介します。人生の終わりに向けて、前向きにしっかりとした準備をしていきましょう。
目次
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いとは?
自筆証書遺言と公正証書遺言は何が違うのでしょうか。 遺言書と公正証書遺言は、どちらも死後の財産分与などを決める大切な書類ですが、手続きや費用に差があるため、自分にあった方法を選ぶ必要があります。行政書士に相談し、適切な方法を選んで遺言を作成することをおすすめします。
公正証書遺言の手続きと費用
公正証書遺言は、遺言書の中でも法的な効力が高く、不動産の相続や高額な預貯金の相続など、大きな遺産が残された場合には必要不可欠なものです。公正証書遺言を作成するためには、遺言の内容の打ち合わせから公証役場での作成、そして保管まで、様々な段階があります。そして公正証書遺言の作成にかかる費用は、遺言で指定される財産の価額に応じて決まります。以下は、公証人手数料令に基づく一般的な手数料の概要です。
▶財産価額が100万円以下の場合、手数料は5,000円です。
▶100万円を超え200万円以下の場合は7,000円です。
▶200万円を超え500万円以下の場合は11,000円です。
▶500万円を超え1,000万円以下の場合は17,000円です。
▶1,000万円を超え3,000万円以下の場合は23,000円です。
▶3,000万円を超え5,000万円以下の場合は29,000円です。
▶5,000万円を超え1億円以下の場合は43,000円です。
▶1億円を超える場合は、43,000円に超過額50,000万円までごとに13,000円を加算した額です。
さらに、遺言加算として1万1,000円が加算されることがあります。また、公正証書遺言の原本枚数が3枚を超える場合、用紙代として超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。正本および謄本の交付にも1枚当たり250円の手数料が必要です。遺言者が入院中などで公証役場まで出向けない場合には、公証人に病院などに出張してもらうことが可能ですが、この場合には手数料が50%加算されるほか、公証人の日当と交通費がかかります。これらはあくまで基本的な手数料であり、具体的な費用は遺言の内容や作成する際の状況によって異なる場合があります。詳細な費用については、公証役場に直接お問い合わせいただくか、専門家に相談することをお勧めします。もし、さらに詳しい情報が必要であれば、日本公証人連合会のウェブサイトをご覧いただくか、最寄りの公証役場にお問い合わせください。安心して遺産を残すためにも、公正証書遺言を作成する際は、信頼できる専門家、行政書士にご相談ください。
公正証書遺言を作る場合に必要なもの
公正証書遺言を作成する際に必要な書類や手続きをご紹介します。
遺言者本人の本人確認資料:印鑑登録証明書や運転免許証など、顔写真入りの公的機関が発行した証明書。
遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本:遺言者の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本。
財産を相続人以外の人に遺贈する場合の受遺者の住民票:法人の場合は資格証明書。
不動産がある場合の登記事項証明書(登記簿謄本)と固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書。
株式等の有価証券や預貯金がある場合の種別とだいたいの金額を書いたメモ。
証人を用意する場合の証人予定者の名前、住所、生年月日及び職業を記載したメモ。
これらの書類は、遺言の内容によって異なることがありますし、公証役場によっても運用が異なる場合があるため、作成する前に公証役場で確認することが重要です。また、公正証書遺言の作成には証人が2名必要ですが、推定相続人や受遺者は証人になれません。証人を自分で手配できない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能です。行政書士に公正証書遺言の作成サポートを依頼すると、証人として出頭ができますし、業務上守秘義務がありますので、安心です。公証人とのやり取りもスムーズに進みます。
自筆証書遺言の作成方法とメリット・デメリット
自筆証書遺言の作成方法とそのメリット・デメリットについてご紹介します。
自筆証書遺言は、遺言者が全文を手書きで作成する遺言のことです。作成には遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自筆で書くこと。遺言者が遺言書に押印すること。訂正がある場合は、訂正箇所を指示し、訂正した旨を付記し、署名と押印をすること等の要件を満たす必要があります。ただし添付する財産目録などはパソコンでの作成も可能です。財産目録の各ページに遺言者の署名・押印をする必要があります。
メリットとしては、費用がかからないことです。他の遺言形式と比べて、公証人や証人にかかる費用が不要です。そして手軽に作成が可能です。思いついたらいつでも自分のタイミングで遺言を作成できます。さらにプライバシーが保たれる部分もあり内容を他人に知られることなく、自分だけで遺言を作成できます。
デメリットとしては、形式に不備があると、遺言が無効になる可能性があります。そして自筆証書遺言は自分で保管するため、紛失や破棄されるリスクがあります。そして遺言が発見された後、家庭裁判所での検認手続きが必要になることがあります。
遺言を作成する際は、これらのメリットとデメリットを考慮し、必要に応じて行政書士や専門家に相談することをお勧めします。また、法務局での保管制度を利用することで、検認手続きを省略し、遺言の安全性を高めることも可能です。
遺言がない場合の法定相続手続きの基礎知識
遺言を書く前に相続に関する基礎知識を持ちましょう。相続は、遺産を受け継ぐための手続きです。遺言がある場合は、遺言が優先されますが、遺言がない場合は法定相続が適用されます。法定相続分による相続手続きは、以下のステップで進められます。
相続人の確定:相続人が誰であるかを確定するために、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などを集めます。
相続財産の確定:不動産の場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。預貯金や株式などの財産の場合は、金融機関から資産の残高証明書を取得します。
相続分の計算:法定相続分に基づいて、各相続人の相続分を計算します。
相続登記:不動産の相続登記を行う場合は、法務局に登記申請を行います。必要な書類は、被相続人の死亡から現在までの戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本、相続人全員の住民票の写し、被相続人の住民票の除票または戸籍附票、委任状(代理人が申請する場合)などです。
遺産分割協議:相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成します。この協議書は、相続登記の際に必要になることがあります。
税金の申告と納付:相続税が発生する場合は、相続税の申告と納付を行います。
法定相続分による相続手続きは、相続人間での合意が得られない場合や、遺言書がない場合に行われることが多いです。手続きには複雑な部分もあるため、不明な点があれば専門家に相談することをお勧めします。また、相続人には、配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹などがいて、相続人によって相続分の割合が異なります。相続税についても、相続人間での贈与や相続する遺産の価値に応じて課税されます。相続に関する基礎知識を把握しておくことで、争いを回避し、円満な相続手続きを進めることができます。また、相続登記は2024年1月から義務化されており、遺産分割協議が終わった後は3年以内に登記を完了させる必要があります。さらに詳しい情報が必要であれば、法務局にお問い合わせいただくのも良いでしょう。