公正証書遺言の作成手順【行政書士の役割】
2023/11/02
公正証書遺言を作成する際、ご自身で手順を調べて作成することももちろん可能ですが、作成する段階で専門的な知識も必要です。行政書士は公正証書遺言の作成の手続きをスムーズに進めることができます。また、遺言者の希望を的確に反映させ、遺産相続におけるトラブルを未然に防止するためにも、専門家に相談をすることは大切です。本稿では、公正証書遺言を作成する際に行政書士が果たす役割を詳しく解説します。
目次
公正証書遺言とは何か?
公正証書遺言は、遺言書の一種で、公証人が立ち会って遺言者が遺言を行い、その内容を書面に残したものです。遺留分や遺産分割について、家族や相続人などが争いを起こさないように、公正な遺言を残すことができます。公証人は、遺言に必要な要件が備わっているかをチェックします。そのため、公正証書遺言は遺言の信用性が非常に高く、相続におけるトラブルが発生するリスクを大幅に低減することができます。行政書士も、公正証書遺言の作成のサポートができます。遺言の相談や手続きを行いたい場合は、行政書士に相談することができます。
公正証書遺言の作成の流れ
行政書士や専門家に相談し、遺言書の内容が大体まとまったら公正証書遺言の作成に入ります。まず、遺言の内容のメモ(遺言者の財産情報や、それを誰にどのような割合で相続させるかの内容、または遺贈の内容など)を、メールや郵送、または持参をして、公証人に提出します。それとともに、必要書類を公証人にご提出ください。必要書類については後述します。公証人が、メモおよび必要書類に基づき、遺言公正証書の案を作成し、遺言者等に提示します。遺言者が内容を確認、修正したい箇所を指示すれば、公証人がその通りに遺言公正証書の案を修正し、確定します。遺言公正証書の案が確定したら公証人と遺言者等との間で打合せをして遺言者に公証役場に出向き、遺言者が公正証書遺言をする日を確定します。場合によって、公証人が遺言者のご自宅や病院等に出張して公正証書遺言をする日時を確定することもできます。その際には出張の手数料がかかります。遺言当日には、遺言者が自らの真意を述べることができるよう利害関係人には、席を外していただくこととなっています。遺言者本人から公証人に対し、証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人はそれが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認し、確定した遺言公正証書の案に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、遺言の内容に間違いがないことを確認してもらいます。内容に誤りがあれば、その場で修正することもあります。遺言の内容に間違いがない場合には、遺言者および証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をすることになります。そして、公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、押捺することによって、遺言公正証書が完成します。
公正証書遺言作成時に必要な書類
①遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書。ただし、印鑑登録証明書に代えて、運転免許証、パスポート、マイナンバーカード(個人番号カード)等の官公署発行の顔写真付き身分証明書を遺言者の本人確認資料にすることもできます。
②遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本。財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの。法人の場合には、その法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)。
③不動産の相続の場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・納税通知書中の課税明細書。
④預貯金等の相続の場合には、その預貯金通帳等またはその通帳のコピー。
⑤遺言者本人が証人を用意される場合には、証人予定者の氏名、住所、生年月日および職業をメモしたもの。
以上が必要書類です。行政書士は戸籍や登記事項証明書の収集のサポートや、証人として立ち会うこともできます。証人は法律上、未成年者、推定相続人、遺贈を受ける者、推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等はなることができませんので遺言者ご自身で用意される場合は注意が必要です。
行政書士を利用するメリット
一般的に、公正証書遺言の作成は、専門家に依頼することが多くなっています。行政書士は、遺言者の意思を確認し、公証人との調整、登記簿謄本等の取得、証人としての立ち合いなど遺言書の作成に必要な手続きを一括して引き受けることができます。公正証書遺言の作成に関する手続きは、一定の手間や時間がかかることが多く、遺言者が安心して遺言を作成できるよう行政書士へ依頼することでスムーズに進めることができ、手続き上の不安は軽減します。身近な存在である行政書士へ一度ご相談ください。