成年後見・任意後見の財産管理について|行政書士が解説【新横浜】
2024/01/29
後見人は、被後見人の代わりに法的手続きや日常生活上の意思決定を行います。その際、後見人は被後見人の財産管理にも関わるため、責任ある業務となります。本記事では、行政書士が成年後見制度・任意後見契約の財産管理について解説します。
目次
任意後見とは
任意後見契約とは、本人の意思がはっきりとしている段階で、本人の判断能力が不十分になったときに備えて、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人との契約によって、任意後見人が本人を援助する制度です。任意後見契約は、契約書の内容に従って後見人が本人の財産管理を行います。任意後見人については家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、その契約の効力が生じます。そして任意後見契約には「将来型」「移行型」「即効型」という種類があります。実情やニーズによって選ぶことができます。
・将来型
将来判断能力が低下した時点で任意後見人から保護を受ける場合
・移行型
本人の判断能力が十分なときは、任意代理契約によって財産管理を行い、判断能力が低下した時点から任意後見に移行する場合
・即効型
本人が軽い認知症などの状況であっても契約時に意思能力があり、任意後見契約の締結直後から効力が発生する場合(直ちに任意後見監督人の申立てが必要です)
成年後見とは
成年後見制度とは、認知症をはじめとした精神上の障害などにより事理弁識する能力をかく状態になった場合、家庭裁判所が選任した成年後見人によって支援するための制度です。本人の判断能力の状態によって「成年後見」「保佐」「補助」という3つのタイプに分けられています。どの状態に当てはまるか、また判断や後見人等(後見人、保佐人、補助人)を誰にするかは、申立ての理由、医師の診断書、本人との面談などを総合的に勘案して家庭裁判所が決定します。これらは裁判所の管轄や申立人となれる人や、決まった書式があります。(家庭裁判所・後見開始の審判参照)
家庭裁判所から選任された後見人等には、類型によって「代理権」「同意権」「取消権」が与えられ、本人の利益のためのみ、与えられた範囲内で権限を使います。なお「成年後見」については、本人が事理弁識能力を欠くため「同意」という概念がありません。後見人は本人に代わって法律行為を行ったり、本人の行為を取り消したりすることができます。成年後見人は後見開始の審判を受けた本人に代わって契約を結んだり本人の契約を取り消したりすることができます。幅広い権限を持つため、後見人は、本人の財産全体をきちんと管理し、本人が日常生活に困らないように十分に配慮していかなければなりません。
後見人の財産管理・身上監護について
成年後見人の財産管理とは、被後見人の財産の管理や保護を行うことです。例えば、預貯金や証券の管理、不動産の売却や賃貸契約、遺産分割協議などが該当します。 後見人は、被後見人の財産目録を作成し、収入支出を記録し、領収書などの書類を保管する必要があります。また、被後見人の財産は、被後見人やその扶養者のためだけに使用できるものであり、第三者に利益を与えたり、貸し付けたりすることはできません。任意後見契約の場合、契約の内容に運用の指示がなされていれば積極的に資産運用をすることも可能です。公序良俗に違反しない限り受任者の承諾があれば有効です。身上監護とは、被後見人の生活や健康、療養などに関する法律行為を行うことです。例えば、住居や施設の契約、介護サービスの契約、医療費の支払いなどが該当します。 ただし、実際に介護を行ったり、医療行為の同意をしたりすることは、後見人の職務ではなく家族の同意を得なくてはなりません。後見人は、被後見人の意思を尊重し、被後見人の心身の状態や生活の状況に配慮しながら、身上監護を行う必要があります。後見人は、被後見人の利益を守るために、財産管理と身上監護の両方を適切に行わなければなりません。
ご自身の死後のことを考えることも重要ですが、後見制度は、生前の過ごし方を考える際に非常に重要です。任意契約は、本人の意思を確実に反映させることも可能です。制度を理解し、自分自身の大切な権利や財産をどのように守っていくか考えてみることをお勧めします。